先日、ある写真コンクールの大賞を受賞した作品を拝見しました。大地にしっかりと足を踏ん張り、鍬を構える農民の姿、刈り取った稲の束を脇に抱え田んぼにすつくと立つ姿。北村正人さんの連作写真「土に生きる」です。この連作写真には、ダイナミックな構図と農民を見つめる目の確かさで高く評価される、農民画家・常田健さんの作品に共通するものがありました。表現されている大地の豊かさと厳しさ、大地に生きる人々の力強さが、見る者の胸に迫ってくるのです。
このごろ、スローフードやスローライフ、あるいは食育という言葉が盛んに使われます。しかし、たとえば、スローフード運動の核にある「消えつつある郷土料理や食品を守る」「質の高い素材を提供してくれる小規模生産者を守る」 「消費者全体に、味の教育を進める」といったことは置き去りにされ、ムードばかりが先行している気がしてなりません。
農業は母なる業であり、常田さんや北村さんが描いたような、自然と向き合う大変な仕事で、 人はそこで足を踏ん張ってきたのだという本当の現実がかえって見えにくくなっているのでは ないかという危惧さえ抱きます。自給率がカロリーベースで約4割という危機的状況にある日本の農業を何とかしなくてはならない時期に、これでいいのでしょうか。
消費者に求めたいのは、ムードばかりでなく、農業に対する真の理解です。本腰をいれ本気 で、農の現実を伝えていく必要を感じます。 |