昨年、棚田学会の現地見学会で中国へ出かけた会員たちがこのほど、写真をふんだんに盛り込んだ報告書『雲南省元陽県の棚田』をまとめました。参加者の中にはプロの写真家もいるだけに、写真集としてもすばらしい出来ばえです。
海外の棚田としてはインドネシアのバリ島やフィリピン・コルディレラのものが日本でも知られていますが、中国の棚田群もスケールといい、美しさといい、それらに優るとも劣らないものがあります。飽きずに写真を眺めていると、アジアの国々が稲作によってつながっていることを改めて実感します。もちろん、日本の各地に残る棚田もその一角を成しているわけです。
棚田は農耕文化のかたまりです。その景観は、棚田地域に住む農家の汗によって守られてきました。つらくても稲作をやめたら、棚田は棚田でなく なります。棚田が「日本のピラミッド」と呼ばれるのは、美しいからだけではありません。
私も会員の1人である棚田学会では昨年から、棚田を守る活動をしている人たちに学会賞を贈って表彰する事業を始めました。学者の研究業績ではなく、現場で苦労している人たちを称揚するのは、学会としては珍しいことです。逆に言えば、そこまでしなくてはならないほど棚田は深刻な状況にある、ということでもあります。
日本の農政は今後、担い手に施策を集中することになっています。その方向を否定するつもりはありませんが、同時に、先人の苦労をしのび、誇るべき文化遺産を守るために、棚田にも光を当て続けたいものです。
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