今年5月、スイス・アールガウ州政府の農政関係者が訪ねてこられ、交流する機会があった。その際、「日本はなぜ、耕作放棄地がそんなに多いのか?」と不思議がられた。スイスでは遊んでいる農地はないという。
なぜかと問うと、「農家に対する直接支払もあり、農地耕作の需要は必ずある」との答え。農家の平均農業所得の8割が連邦政府からの直接支払だという。この手厚い農業保護には国民の強い支持があるようだ。
そもそもスイスでは、憲法で家族農業経営の維持を規定している。そして、農民土地法を制定し「農作業に従事し経営管理する者だけ」が、農地の(権利)取得ができるよう厳しく規制している。「取引・営業の自由」を制限しているのである。
フランス、ドイツなど大国に囲まれ山岳地域が多い小国スイスでは、国土政策、地域政策、農業政策、観光政策の基本に、家族農業経営の安定による農業者の地域定住と地域社会の維持を据えている。
いま、わが国では耕作放棄地の解消や農村地域の活性化が課題になっている。その解決策として「株式会社(企業)などの農業参入」という農地制度の規制緩和を求める意見が一部にある。極めて疑問だ。なぜ、耕作放棄地が増えたのか、農業に誇りと意欲を持つ農業者、若者が減ってしまったのか。農村現場の視点から検証し、解決方策を見いだす上で、スイスの国づくりは参考になるのではないか。 |