平成17年10月7日

 

第61回学習会議事録

 

1.日時:10月7日(金)13:30〜16:00

2.場所:JAビル8F全中大会議室

3.テーマ:「今後の森林の役割と環境の整備への取り組み」

4.講師:日本大学 生物資源科学部 森林資源科学科

教授   木平 勇吉 氏

5.参加者:83名

     フォーラム会員、地方フォーラム会員、一般参加者

6.概要:

(1)木平氏より1時間10分程度、別紙資料に基づき、森林の果たしている役割、森林と林業の現状、国が講じている森林への施策、環境の整備への取り組みについての報告があった

(2)会場参加者からは、新たな担い手の受入体制、森林保全のありかた、京都議定書で課せられたCO2削減目標達成の可能性、鳥獣被害への対応等の質問や意見要望があった

 

7.講義概要:

[森林の役割]

・人工造林面積は明治以降ほぼ安定的に10万ha程度であったが、戦中時の一時的増加を別として、日本の高度成長の始まりである1960年以降、住宅、パルプ産業など森林資源の需要の増加にあわせ、人工林の森林蓄積により植林面積は40万haまで拡大した。この当時の森林の役割は木材の供給という点にあった。

・しかしながら19601980年代には、徐々に外材の輸入が増えていくとともに、木材価格が高騰していった時期でもある。なかでも、1970年(s.45)は木材の輸入割合が50%を超えたターニングポイントとして記憶され、その後、国内木材価格の低下、林業産出額の縮小が進み、1980年を境に林業の低迷が始まった。

・こうしたなか、林野庁の調査では、近年の国民の森林への期待は、木材生産が大きく低下するものの、災害防止、地球温暖化防止、水資源涵養といった災害対応力や環境保全に向けた期待が高まっている。

・法的側面からみても、1964年の林業基本法では、林業総生産の増大等による林業の安定的発展、林業従事者の所得の増大による経済的、社会的地位の向上を目指していたが、2001年の森林・林業基本法では、森林の果たしている多面的機能の持続的発揮へと、その流れを変えてきた。

[森林と林業の現状]

・所有の観点から見た場合、15haといった小規模な山林を所有している農家が圧倒的に多く、これらを含む個人で森林を所有する林家の割合は全体の6割となっている。

・一方、林業を生業(家計充足率60%以上)とする林業家は1970年の8,882から2000年には2,493と大きく減少している。この減少にともない伐採後に放置される森林も増える傾向にある。

・林業経営の収支からみた場合、林業所得は木材価格が低下する一方、人件費等林業経営費は変わっていないことから、林業所得は中規模林家で戸あたり21万円と大幅に減少している。

・植林後の間伐についても、労働力の確保ができない、資金がない、採算が合わないこと等から実施されない箇所が増えている。

[国が講じている森林への施策]

・先に示した状況に対し、国は、森林組合、素材生産業者等林業事業体に対し伐採事業の働きかけを行うとともに、間伐の推進を進めているが用途が明確でないこともあり、間伐材の加工流通体制が十分なまでにはなっていない。

・森林の担い手として、あらたに「緑の雇用」も実施しており、これについては2003年には2,268人が林業にあらたに取り組むなど成果が上がってきているが、受入側の体制が十分ではないのが現状である。

・また、国の災害対策では、治山工事を実施しており、この部分も森林管理の大きなウェイトを占めている。

・環境対策としては、今年2月に京都議定書が発効したが、日本は90年の二酸化炭素排出比で6.0%削減することとしており、このうち3.9%を森林の吸収量で賄うこととしている。

この排出にあたっては、1.新規植林、2.再植林、3.育成林の適切な整備・保全の3つの選択肢があるが日本の場合、3.の森林経営でもって対応することとなる。

・また、H型鋼との組合せによる木質ハイブリッド建築材の普及や木質バイオマス発電の建設などに努めている。

[環境の整備への取り組み]

・花粉症発生抑制に向け、花粉の少ないスギ品種の開発、雄花の抜き取り等の実施に加え、環境問題への意識が高まるなか、森林ボランティア団体数が伸びており、この活動への支援も必要となっている。

・木材価格の高いときには機能していた国有林であるが、国有林債務処理については、1998年に一般会計への承継、国有林野事業特別会計での移管により対処していくこととなった。また、国有林の役割も木材生産から水土保全、森林と人との共生等環境重視へと期待される役割が変化するなかでの取り組みに変わってきている。

[おわりに]

・森林の役割については、先に示したとおり変わりつつあるが、森林の利用を多くの人が理解し、川上、川下の役割も含め、経済と環境を一体として考えることがとても大事だと考える。

 

8.主な質疑

1.Q:2,000人の新規担い手が増え、受入体制が不十分ということだが、このような貴重な人材を行政はどう考えているのか。また、担い手の受入については森林組合連合会が担当されているのか

A:ムードで期待を持って入られる方が多い。受入側は医療、教育といった生活基盤を整備しておくことが必要。また、森林の作業は専門家でないと難しいこともあり、訓練施設が必要。

森林への新規就業者対応については、全森連が事業主体で行っており、昨年度は2,468名、本年度は1,500名弱を、450の森林組合で受入れている。現在、森林事業の現役は約3万人であるが、60歳以上が半数以上を占め、5年後にはその半数が引退するだろう。森林事業の経営は、木材価格の低下、売上高の減少で厳しくなっているが、新規就業者に対しては、所得保証などの手立てもおこなうなど息の長い取り組みが必要と考える。

2.Q:伐採後の跡地や放置しているところは、そのままにしているとどういう状況になるのか。

A:放置しておくと、5年くらいで小さな潅木が生えてきて立派な山になるが、木材を生産する森林にはならない。

3.Q:森林のおかれている状況は中山間地の棚田に相通じるものがあるように感じる。棚田の保全と同様に、一体的に考えるべきではないか。

A:行政の縦割りで、対応も個々の立場で論じられてきたが、自然環境保全という観点では、棚田も森林も同様である。最近は流域管理の立場から行政の対応も一体的なものになりつつある。

4.Q:京都議定書の公約で、森林吸収に対し過剰な期待がかけられているということだが、3.9%の目標は達成できるのか。

A:過剰な期待がかかっているのは事実であり、2008年〜2012年で達成できない場合は、2013年〜2017年での対応に持ち越しとなる。その場合は利子がつくだろう。森林については間伐を実施することが大事であり、これを実現するためには労働力が必要で、サポートが必要ということになる。

5.Q:資料にあるように、2,300億円程度の林業産出額で日本の林業に展望を見出すことができるか。個人の見解でかまわない。

A:輸入木材も含めた木材の現行レベルの総需要量は続く。現在、80%が外材だが、外国が今後永久に日本に輸出するという保障はない。天然林の主産地はロシア、カナダ、人口林はチリ、ニュージーランド、米国の一部が産出している。天然林の場合、一度切ればそれで終わりであり、将来、13年程度先と考えられるが、海外からの輸入はなくなるだろう。木材は節約して使うのが正しい姿だと思うし、公共財ともいうべき資源である。このため、この資源の保全については、環境税等により社会的に負担する仕組みが必要と考える。

6.Q:外材が13年程度先に消失する根拠は何か。また、環境税が実施される場合はどこに使うのが望ましいか。

A:根拠というものではないが、海外の事情を見ているとそのように感じる。遠からずそのような時がくる。日本がいつまでも木材を買えると思っていることが危うい。環境税の使用使途がどうなるかは現時点では見当がつかないが、神奈川県では条例制定により38億円を調達し、水源保全のため、森林の管理権と購入経営を森林公社に任せる保証料として考えているようだ。

7.Q:神奈川県秦野市に住んでいるが、里山で鳥獣被害が増えている。森林と生物の共生についてどのように考えるか。また、消費者が使う間伐材はどんなものが考えられるか。たとえば割り箸などが考えられるが。

A:丹沢山系には4万haの森林があるが、鹿が増えすぎて森林は傷ついている。山間に人が住むようになり、鹿が山林に追われたわけだが、生息場所、生息数のコントロールが必要になっている。生物多様性の観点からは、山が様々な樹木で構成されるのが望ましいが、人工林を混用林にすぐにはできない。長い時間をかけて計画的な取り組みが必要になる。

 また、間伐材の利用については、経済的に成立するか不明だが、現在の技術と資本を用いれば、間伐材を紙パック等の小物だけにするのではなく、もっと大きなものなども作れると考える。